2016年に政府が提唱した「働き方改革」。最近ではトヨタ自動車などの大企業が賃金体系の見直しや育児と仕事の両立支援に取り組んでいることなどもあり、働き方改革に対して積極的な動きがよく見られます。そんな中、従業員の働き方だけでなく企業の在り方までも変える取り組みとして注目されているのが「テレワーク」という働き方。インターネットなどを利用した時間や場所にとらわれない柔軟な労働の形態で、さまざまな利点があるといわれています。テレワークを早々に導入して高い成果を上げている事例を見てみましょう。
テレワーク先駆者百選 総務大臣賞 事例のご紹介:http://www.soumu.go.jp/main_content/000509670.pdf
テレワーク導入事例①明治安田生命
▶既存のノウハウを利用
明治安田生命では、テレワークの中でも比較的実施しやすいモバイルワークを先行実施し、そのノウハウを利用してテレワークの本格実施へと移りました。たとえば、テレワークを実施するにあたって大きな壁になるセキュリティの問題。営業用端末の活用を通じてすでに十分に蓄積されていたセキュリティ対策のノウハウが基盤となり、スムーズにセキュリティの壁をクリアできたようです。
▶管理監督者の理解促進
上司である管理監督者の理解なしに、その部下であるスタッフ層への新体制の浸透は不可能。明治安田生命では、管理監督者から先行してテレワークのトライアルが実施されました。トライアルのアンケートの結果、管理監督者の約9割がテレワーク実施による労働の改善が見込めると回答したそうです。
▶復職支援にテレワークを活用
育児や介護で休職していた職員でも、復職前に社内のイントラネットを閲覧できるシステムを開発。スムーズな復職ができる環境が整備されました。
▶ワークライフバランスの向上
テレワークの実施で通勤時間の負担が軽減されたり、家庭と仕事の両立が容易になったりと従業員のワークライフバランスの改善が見られたようです。
▶業務効率・生産性の向上
利用者の約8割が業務の効率化を実感。直行や直帰が可能になり、出張の多い部署の職員に肉体的負担が軽減されました。
▶法定外時間外労働の削減
テレワーク導入後、本社中堅スタッフの法定外時間外勤務時間は、前年度に比べて約2割削減されました。
テレワーク導入事例②ヤフー株式会社
▶どこでもオフィス
全社員を対象に「どこでもオフィス」という名称でテレワークを導入。在宅に限定せず、どこでも社員が希望する場所で勤務することが可能に。年末年始には名古屋・大阪・北九州の三つの地方拠点をどこでもオフィス用に開放。その三都市の近くに帰省する社員がどこでもオフィスと地方拠点を利用することで、交通機関の混雑を避けて帰省することが可能になりました。
▶テレワークでもオフィスと同じ環境を
テレワークの実施時でも、通常のオフィス勤務時と同じように働けるよう、リモートアクセス、コミュニケーションツール、貸与端末、セキュリティ対策などの利用環境の整備が行われています。
▶フリーアドレス制を全面導入
社内勤務か在宅・社外勤務かという区分だけではなく、社内でも時間や場所にとらわれない自由な働き方を実現しました。
▶業務効率の向上
オフィスから離れた場所で仕事をし、普段触れない人や町、文化の刺激を受けることで新たな思考が働いて企画や文章の仕事がはかどったとの声が上がりました。
▶社員の生活の充実
自宅勤務が可能になったことで家族と過ごせる時間が増え、子供が病気で学校に行けない場合などにも家にいてあげられるのが大きな利点です。
▶通勤困難時も対応可能
台風や大雪などでオフィスへの通勤が困難な場合でも、どこでもオフィスを利用することで多くの社員が危険を冒すことなく通常通りの業務を行うことが可能になりました。
この他にも産休復職率が97.2%を記録するなど、テレワークを導入することで多くのメリットが生まれていることがわかります。
テレワーク導入の強い味方!テレワーク保険とは?
「特定危険担保特約付帯サイバーリスク保険」通称テレワーク保険は、日本マイクロソフトと東京海上日動火災保険が共同開発した保険で、テレワーク中のリスクをカバーしてくれる世界初の保険商品として注目されています。
▶セキュリティのリスクをカバー
テレワークはその特性上、オフィス内の守られた環境ではない外部で情報端末を利用する場面が多くなります。その際に発生するモバイル端末の盗難や紛失による情報漏洩、ウイルス感染などのセキュリティ面のリスクをカバーし、安心してテレワークを導入できるように開発された保険がテレワーク保険です。その補償内容は、会社から貸与されるモバイルPCの利用時に発生するさまざまな損害に対して、損害賠償金やその他対応費用を補償してくれるというもの。総務省が発表した「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(平成29年)ではテレワーク未導入企業の43.7%が「情報セキュリティの確保」を課題に挙げているほど、テレワーク実施におけるセキュリティの問題は大きな壁であるようです。テレワーク保険が広く普及すれば、テレワークに積極的になる企業はもっと増えるかもしれません。
ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究(総務省)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h29_06_houkoku.pdf
▶Windows10のみの対応(2018年2月現在)
日本マイクロソフトと東京海上日動火災保険によると、テレワーク保険の対象となる端末はWindows10を搭載したPCのみとのこと。Windows10以前のOSが搭載された端末は対象にならないので注意が必要です。テレワーク保険は対象になっている端末とセットになる形で提供されます。つまり対象の端末を購入すれば自動的にテレワーク保険がついてくるので、保険会社と契約を結ぶ必要はありません。
いかがでしたか?
時間や場所にとらわれない新しい労働の形であるテレワークには、業務効率やワークライフバランスの向上、復職支援につながるなどさまざまなメリットがあることを実際の事例を通して見てみました。大手企業をはじめ多くの企業が導入を始めているテレワーク。セキュリティ面での不安をカバーしてくれるテレワーク保険が登場したこともあり、今後さらにテレワークの普及率は上がっていきそうです。